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天体観測入門

 


天体観測ってなに?

星空をじっくりながめて(観察して)いると、星々の美しさに感動するとともに、夜空の中の変化に気づいたり、また宇宙の奥深くに起こっている何かを探りたいという気持ちが起こってくるかもしれません。その変化を追いかけたり、調べたりするために星空と向かい合うことが「天体観測」です。

●観察と観測

 この2つの言葉は、よく同じように使われることがありますが、本来はちがった意味・ニュアンスがあります。 国語事典で、「観察」と「観測」の意味を調べてみると...

「観察」:ありのままの状態を、注意して見ること
「観測」:気象・天体などの状態やその変化を観察し測定すること。

と書かれてあります。
つまり、観察と観察は“ありのままの状態を注意して見ること”で同じですが、さらに“観測”となると、その状態や変化の様子を「測定」し、記録することが必要となってくるわけです。

●なにを測定するか<観測対象の例>

・天体(主に彗星・変光星)の明るさやその変化
・天体(主に彗星・小惑星・新星・超新星)の位置やその変化
・天体(主に彗星)の形状やその変化
  彗星の大きさ(視直径を角度で)・尾の長さや方向・中央集光度、など。
  流星の色や爆発・分裂の状態
・流星の数や流れた経路、大流星の経路(方位・地平高度)
・太陽や流星からの電波
・日食・月食の時刻観測や状態変化。
・月による恒星・惑星の食、恒星による小惑星の食の時刻観測

*時間は日付と時刻(秒単位が要求されることが多い。中には0.1秒まで)

●手軽にできる天体観測

・流星観測
・変光星観測
・天体写真撮影
・惑星・彗星などのスケッチ

 


変光星を観測しよう

  ペルセウス座のβ(ベータ)星・アルゴルとくじら座のο(オミクロン星)のミラは、明るさを変える星の代表格です。今日3万5千個を越える変光星の中でも「超」有名な星です。
 アルゴルは、普段は2等星ですが、約3日おきに3等まで暗くなる星。
 ミラは約100日で、2等から10等まで明るくなったり暗くなったりを繰り返す星です。
 どちらも、明るさを変える「変光星」で、肉眼でもその明るさの変化の様子を観測できます。

 ミラは、10月30日頃、明るさのピークを迎えます。また、アルゴルが暗くなるピークは下の表の通りです。まわりにある明るさのわかっている星とくらべることによって、ある時刻の光度を観測することができます。

の場合の観測とは、“いつ、どのくらいの明るさか”を測って記録に残すことです。時間は「分」まで、明るさの尺度は「等級」を使います。

(1)他の星と比べて明るさを調べる

 基本は、明るさのわかっている星と比べることによって、明るさを変える星(変光星)の明るさを目で測るという方法です。
 ほとんど同じ明るさの星があれば、変光星の明るさはその星と同じ明るさとします。
 しかし、アルゴルや極大期のミラは明るい星なので、近くにほとんど同じ明るさの星はめったにありません。
 そこで、「あの星とあの星の中間ぐらいだから、2等星くらいかな?」「あの星とこの星の間の明るさだけど、この星の方に近いからう〜ん、まあ1.5等と2等の間。1.7等星ぐらいかな!?」というふうに明るさを見積もります。
 しかし、この方法はおおざっぱな方法です。より正確に観測したいという方は、次の
(2)からの方法を使ってください。


(2)より、正確な方法 ---「比例法」

次のように、明るさを比べる星(比較星・ひかくせい)をさがし、比較します。

@変光星より少し明るい星仮にaとします)と少しくらい星)をさがします。
Aaの明るさに、変光星の明るさががそれぞれどれだけ近いかを見くらべます
Baの明るさを(頭のなかで)10段階し、変光星は“aにいくつからいくつ”と考え、つぎのようにメモします。

  明るさがaのほうに近ければ、その程度によって、   a (1) v (9) b ・・・かなり(a)にちかい 
                                 a (2) v (8) b
                                 a (3) v (7) b
                                 a (4) v (6) b ・・・ほとんど同じだが(a)にちかい
  もし、変光星が、aとbのちょうど中間ならば、      a (5) v (5) b 

  
明るさがbのほうに近ければ、その程度によって、   a (6) v (4) b ・・・かなり(b)にちかい
                                 a (7) v (3) b
                                 a (8) v (2) b
                                 a (9) v (1) b ・・・かなり(b)にちかい

  もし、変光星が、a、またはbとまったく同じならば、    v=a、v=bなどとメモします。 

Cたとえば、a
星が1.6等、星は2.2等aにわりと近くてよりかなり暗く、“Aに2でから8”と考えたとします。
  観測した時刻とともに次のようにメモします。
     2000年*月*日 *時*分*秒
       a  (2) V  (8)  b     
       *(Vは明るさを変える星・Variableの意味です)
       *もちろん、aとbの星が、何座の何という星かということもメモしておきます

Dあとは計算です。
    ・明るさは、その星の等級から小数点をなくした2桁の数字とします。たとえば2.4等は“24”として書きます。

                              (bの明るさ−aの明るさ)
 
     変光星の明るさ = (a)の明るさ + ------------------------------------

                                 10

    <説明>

   ・aとbの明るさの差を<C>とすると   C = 22-16 =6
   ・aとbの明るさの差の1段階がどのくらいかは、Cを10で割ればいいから、6÷10で0.6(0.6等ではなく、実際は0.06等)。
   ・aから2段階暗いということは、aより (C÷10)×2 = 0.6×2 =1.2数字が大きいということ。
   ・aの明るさは16としているので、16+0.6=16.6

   ・小数点をつけなおして、1.66等。
   ・誤差を考えて、観測地は1.7等とする。

以上の観測法を、変光星観測では「比例法」と呼んでおり、初心者の方にもおすすめです。

(2)比較星選びの注意点〜より正確な観測とするために〜
次のいくつかを頭に入れると、さらに正確な観測となります。
@同じ色の星と比べる。一般に赤い星は、青い星と比べて人間の目に感じる明るさが違うので選ばない。
A地平線からの高さ(地平高度)ができるだけ同じ星を選ぶ。地平高度が低くなると、地球の大気の吸収で、本来の明るさより暗くなってしまうからです。
B可能であれば、複数の比較星を選んで何回か観測し平均する。

(3)観測報告の書き方

たとえば、次のように書きます。

例1)さそり座デルタ星
    2000年7月23日 21時13分30秒(JST)
    1.7等(肉眼による目測)
    観測者 遊佐徹 (観測場所・連絡先・住所)
  例2)さそり座デルタ星
              2000 July 23.509(UT)
              mag=1.7
              Obs. Toru Yusa

 

参考:世界時(UT)について

 せっかくの貴重な観測。そのとき、その星を見ているのは、全世界であなた一人かもしれません。変光星の観測報告は、@変光星の名前、A観測時刻とB観測した光度、C観測者名の4点です。
 ただし、変光星は外国の観測者にとっても貴重な資料になりますので、世界共通の時刻で報告する約束になっています。世界共通の時刻とは、グリニッジ天文台(経度0°)を基準とした「世界時(
Universal Time =UT)」で、次のように求めます。

         {日本時間の“時(30時間制)”−9}+分
  世界時=------------------------------------
                1440

 

例)1999年9月18日21時13分(日本時)をUTに変換する

@観測時刻の21時から、グリニッジとの時差(9時間)を引く
       21−9=12
A12に60(1時間あたりの分数)をかける。
       12
×60=720
B720に、観測時刻の分数(13)をたす。
       720+13=733
C上記の分数(732)を1日の分数(1440)で割る。
       732
÷1440=0.509027
...

  *以上の計算は電卓で、219 ×60 + 13 ÷1440 で求まる

D時刻の精度を考え、小数点を丸める(1分=0.0007日)
       0.509027 → 0.509
  *小数点5桁以下は無意味ですので。通常3桁で十分。
E日付に、Dの値を足す。

観測時刻: 1999. Sept.18.509(UT)

 


天体写真の簡単な撮影のしかた

 天文雑誌やインターネットの星の写真をみて、自分も撮ってみたいと思ったことはありませんか?

 すばる望遠鏡や、ハッブル望遠鏡で撮影した写真は無理でも、こんな写真なら、簡単に撮れます。

 右の写真は、私が20年前・中学3年生の時にとったはじめての天体写真。こんなものなら撮れそう。自信ついたでしょう。
 でも、「難しそう。めんどくさそう。特別な機材が必要なんじゃない?」という声が聞こえてきますね。

 それほど、難しいことはありません。普通の一眼レフカメラとちょっとした機材で十分。とにかく始めてみましょう。わりと簡単な手順で、意外によく写ってくれるものです。やってみれば、きっととりこになるはずです。

 何度かやっているうちに....とても楽しくなって、次第に奥が深いことに気づいていく。そしてあなたは、私のようになってしまう..... 「やっぱりやめた?」 そんなこといわないで、さあ、星の写真にチャレンジしましょう!

 

hokuten.jpg (5492 バイト)

nissyuu.jpg (8223 バイト)

1.準備するもの

必要最小限必要なものは、次の8点です。

◎カメラ(一眼レフ)

◎フィルム

◎三脚 ◎レリーズ

camera.jpg (3654 バイト)

film.jpg (3383 バイト) tripod.jpg (2564 バイト) reliese.jpg (2874 バイト)
長時間シャッターを開け、ピントや絞りを固定できることが必要。数十秒〜1分程度露光できるなら、コンパクトカメラやデジカメも。

 

ISO400(〜1600)程度の高感度なもの。流れ星を撮りたいという場合は、可能な限り高感度のものを。 なるべくがっちりしたもの シャッターを長時間開けるためのもの。写真店で1000円程度。あまり長いものは不向き。
◎撮影記録メモ用紙

◎懐炉

◎時計 ◎その他星座観察用具

kirokupad.jpg (3321 バイト)

 

kairo.jpg (3090 バイト)

watch.jpg (2630 バイト) obstool.jpg (4578 バイト)
天体名や撮影時刻などを記録するもの。あらかじめ、必要な項目を表などにしておく。 自分の体を温める、のではない。レンズにゴム等で巻き付けて温め、レンズ面に夜露がつくのを防ぐ。これがないと数時間の撮影は困難。使い捨てカイロは実用性なし。 できれば、秒単位まで正確に合わせておくと、後で貴重なデータとなる(かも!) 星座早見盤・星図・双眼鏡など。
赤セロファン付懐中電灯は、撮影中のカメラや自分の目に邪魔な光が入らないように暗くする、天体観測の「超」必需品。

 

2.とにかく、夜空の星を撮ってみる

(1)フィルムをカメラに装填する

(2)カメラの設定

シャッタースピードの目盛りをバルブ(B)の位置に

filmtocamera.jpg (4719 バイト)

絞りは、開放〜1しぼり程絞る

 開放より1〜1.5しぼり分絞った方が、星はきれいな点に写ります。

ピントは無限遠(∞)に

 天体は限りなく無限の遠い距離。(∞)に合わせれば、自動的に星にピントが合います

focusling.jpg (5321 バイト)

(3)三脚に固定する

 できるだけ足は短くし、しっかりひろげましょう。
 傾きがないように足の長さを調整します。
 固定し終わったら、もういちど、ピントやシャッター速度、絞りの位置を確認します。

cameraontripod.jpg (3496 バイト)

(4)空に向け、ピントを調整する

遠くの街灯や明るい星をファインダーで見ながら、ピントを調整します。(∞)の位置で、ピントが合っていますよね

(5)構図を決める

明るい星をたよりに、撮影したい天体や、星座がバランスよく入っているか確認します。地平線を入れて撮影する場合には、水平になっているか注意します。 
 カメラはファインダーでは明るい星しか見えませんので、慎重に。

 

 

cameratosky.jpg (3391 バイト)

 

(6)いよいりレリーズを押す〜撮影開始〜

 露出開始時間や天体名をいメモしながら、レリーズを押します

☆ほら、写ったでしょ!

観測時刻は、秒まで正確に記録しましょう。
後日、貴重なデータとなることもあり得ます。