11/12/05 22:32
天文なんでも質問箱・回答コーナー
このページは、プラネタリウム館出口に設置した「天文なんでも質問箱」に回答するコーナーです
も く じ
地球・月 ☆月は地球のかけらなのに、どうして気温や環境が違うのですか?
太陽 ☆太陽の黒点は何度ですか? ☆太陽の黒点は、なぜできたり消えたりするのですか? 宇宙 ☆ビックバンはいつ、どうして起こったのですか
☆宇宙はどこまで続いているのですか
☆なにもない暗闇からなぜビッグバンが起きるんですか? 夜空の星 ☆星を一番最初に見た人は一体誰? ☆「めぐみ」「ちえこ」という星ありますか? ☆どうして星や月ってあるの? ☆宇宙には、何個くらいの星があるのですか? ☆雨の夜に星はありませんが、天体望遠鏡を使えば星はみえますか? ☆カノープスは古川から見えますか?
☆月は地球のかけらなのに、どうして気温や環境が違うのですか?(さとみさん・23歳)
私たちにとって、もっとも身近な天体・月。その月がどのようにできたかについては、次の4つの説が有名です。
・「分裂説」・・・月も地球も最初は1個の天体だったが、地球の早い自転のため、地球と月とに分裂した。
・「集積説」・・・地球がつくられていく途中で、地球から飛び出したかけらが集まって月となった。
・「捕獲説」・・・他のところでできた星が、地球に近づいたとき地球の引力にとらえて地球の周りを回るようになった。
・「ジャイアント・インパクト説」・・・地球ができつつある頃、火星ほどの大きさ(地球の半分ほど)の星が地球に衝突した。その時飛び散った地球の一部分と、ばらばらになった天体が再び集まって月になった。
この4つのうち、ジャイアント・インパクト説が現在有力な説となっています。
さて、地球と月は約38万km離れています。でも、太陽との距離・1億5000万kmからすれば、地球も月も、太陽からほとんど同じ距離と考えてかまいません。ですから、太陽から受ける熱や光などのエネルギーは、地球も月も同じです。ですから、気温も同じはずですね。でも実際には、月と地球の温度はまったちがいます。
たとえば、月の夜の場所の最低気温は氷点下170度、また昼の最高気温は140度(赤道付近)にも達します。この原因は、「月の一日の長さ」にあります。月の1日、つまりある地点で太陽が昇ってから、ふたたび太陽が昇ってくるまでの長さは、月の満ち欠けをみていればわかりますね。そう、1ヶ月です。そして、月の昼間の長さは、月のある一点が朝を迎えてから夜になるまで(つまり、明るくなってから、縁にかくれて暗くなるまで)の日数となり、約15日となります。15日間も昼ということは、その間ずっと太陽の光が当たり、逆に15日間暗黒の闇が続きます。そのために、温度差が非常に大きく、生命にとっては過酷な環境となるわけです。
くわえて、月にはナトリウム原子などからなる非常に薄い大気しか存在しません。ほとんど真空に近いといっても過言ではなく、生き物が生きていくために重要な酸素や水はまったくないのです。(月の極地方に大量の氷があるといわれていますが、まだ確かではありません。また、わずかに空気や湖があるというお話もあります)。
では、なぜ月には水や酸素などの空気がないのでしょうか?答えは、月の大きさ(重さ)に関係があります。月の直径は、地球の3分の1ないし4分の1しかありません。重さも地球の81分の1、重力も6分の1しかなく、長い時間のなかで、空気や水分は月の重力を振り払って宇宙に拡散してしまったのです。直径が地球の約2分の1(重さが10分の1)の火星でさえ、昔は豊富にあったとされる空気が、今は非常に薄い状態です。
月と地球、近いようで遠い天体。同じところにあるように見えて、まったく異なる星なのです。地球は、月と同じだけの太陽の光を受けていながら、適度な重力をもって、適度な時間で自転し、適度な温度調節のメカニズムと、生命を有害な紫外線や宇宙線から守るオゾンなどの大気圏を備えています。それを考えると、地球がいかに恵まれた星なのかわかりますよね。
最近よく耳にする、オゾン層破壊・地球温暖化・砂漠化・大気汚染・等々。これらは、私たち人間が、自らの手で地球を破壊しようとしている結果です。このままでは、地球は生命のすめない星になってしまうかもしれません。 現在、宇宙探査や開発が行われています。遠い将来、月や火星が第2の地球となって、多くの人間が移住するかもしれません。しかし、第2の住まいを宇宙につくるより、地球の環境を、今、守ることのほうが、はるかに現実的で、経済的で、実現可能な気がするのですが。☆太陽の黒点は何度ですか?
(裕太くん・9歳)
太陽の黒点は、だいたい3800度。太陽の黒点いがいの温度はというのは、それよりももっと高くて、だいたい6000度あります。
写真などでみると、黒点は黒くて何もないところのようにみえますね。でも、それは、6000度で燃える太陽全体がちょうどよく見える明るさにしたために、それより温度が低くて光の弱い黒点が暗く見えるだけなのです。太陽については「太陽ってどんな星」も見てください
☆太陽の黒点は、なぜできたり消えたりするのですか?
(夏休み中の電話での質問より)
太陽の内部は、中心部から、「核」「放射層」「対流層」にわけられます。このうち、核と放射層は、密度が非常に重く、金属のような性質があります。このように内部で密度の高いものが回転すると、自転車の発電器(ダイナモ)と同じ原理で、太陽内部の対流層に磁石のような働き(磁力)が生まれます。太陽の回転によって、この磁石の線(磁力線)がねじれながら強まっていくと、磁力線は太陽の表面「光球」を突きぬけてきます。この時の磁石の力は5000ガウス。非常に強い磁力のために、太陽内部の熱が対流層から伝わりにくくなり、その結果できる温度の比較的低い部分ができます。これが、黒点というわけです。表面・光球が約6000度とすると、黒点は約3800度です。
さて、数日間太陽を観察すると、新しい黒点が発生したり、どんどん大きく成長したり、逆に消えていくものもあります。これは、太陽の磁力線の強さが強くなったり弱くなったり変化があるということ。言いかえれば、太陽の活動がそれだけ変化の激しいことを意味しています。
なお、太陽活動を長期間みていくと、11年ごとに活動の活発な時期がやってくることがわかります。観測によれば、太陽の磁力線の向き(磁石で言えばN極とS極)が11年ごとに変わり、その変わり目の時に黒点の数が少なくなることがわかっています。この11年ごとの周期がなぜ起こるかについては、まだなぞの部分が多いのです。太陽については「太陽ってどんな星」も見てください
☆ビックバンはいつ、どうして起こったのですか
(恵さん・15歳)
はるか遠い昔、まだ宇宙がなかったときがあったそうです。そこには、まったく何もない世界。今の私たちには想像もできませんが、時間も空間も、光も、物質も、すべてなにもない世界が広がっていました。
普通に考えれば、何もないところからは何も生まれませんね。でも、最近の「量子論」という科学では、何もない「無」の世界はゆらいでいるとされています。
そして、「無のゆらぎ」には途方もないエネルギーがひそんでいたのです。 宇宙は、この「無」から生まれました。
今から約150億年前、「無のゆらぎ」から、突然小さな小さな宇宙が誕生しました。10のマイナス34乗センチ(1センチの1兆分の1の、1兆分の1の、さらに100億分の1)。宇宙のすべては、この超ミクロの宇宙からはじまります。
宇宙が誕生して一瞬のうちに(10のマイナス44秒後に)、10の100乗倍に膨れあがりました。これが、宇宙のインフレーション(急膨張)です。この最中におこったのが、ビックバンです。「無のゆらぎ」によってつくられたすさまじいエネルギーが、すべて、熱エネルギーに変わり、火の玉宇宙(ビックバン)となったのです。
上の恵さんへの回答と少し重なりますがご了承下さい。
宇宙は、150億年前“無”から誕生した、といわれています。
“無”とは、物も光も、時間も空間も、なにもかも存在しない世界のことで、宇宙が始まる前はまったく何もない暗闇でした。日常の生活では、“無”からは何も生まれてはきませんが、「量子論」という、とても小さいものを扱う学問の考えでは、“無”はゆらいでいる、とされます。
宇宙は、その「無のゆらぎ」、真空の高いエネルギーから誕生しました。空間どうしが斥けあう、とてつもない真空のエネルギーが、ビッグバンにつながったとされています。
銀河系外の銀河はどの銀河も、遠いものほど速い速度で互いに遠ざかっています。これらをおよそ150億年前にさかのぼると、どの銀河も一点に集まります。つまり、150億年前は、宇宙は非常に小さな空間に宇宙の全物質がギュッと詰まっていて、超高密度・超高温の「火の玉」状態だったことになります。こうして大爆発がおこって宇宙が始まったものをビッグバンと呼んでいるわけです。
ビッグバンの理論によると、現在も宇宙には極低温の放射電波が満ちていて、それらにはごく小さなムラがあり、またヘリウムや水素といった物質の量はあるきまった比率になるはずという計算結果がでました。
近年の観測結果は、これらをよく説明するもので、宇宙の始まりやビッグバンの考えは、多くの学者から認められる考えとなっています。
☆宇宙はどこまで続いているのですか
(恵さん・15歳)
宇宙に果てがある、なんてふつうは信じられませんよね。だって、果てがあるなら、その先は一体どうなっているのでしょう、とだれでも不思議に思いますよね。
でも、まだ誰も実際にみてはいませんが、宇宙には果てがあるそうです。その「果て」の先は、まったく何もない世界。時間も空間も、光も、物質も、すべてなにもない世界で、もはや宇宙ではないのです。
その果てまで、私たちのいる場所(銀河系)から、光の速さで150億年もかかる距離(150億光年)であるとされています。
☆星を一番最初に見た人は一体誰?(恵さん・15歳)
宇宙の年齢は、150億年。私たちの太陽が所属する約2000億個の星からなる銀河系は、120億年前にできたとされています。ですから、私たちが毎晩見上げる星の最初は、120億年前にできたとかんがえればいいでしょう。でも太陽が生まれたのは50億年前、地球が生まれたのが45億年前。更に、地球にはじめて微生物が誕生したのが40億年前のはなしです。
このような昔から星はありますので、誰が最初に見たかはわかりません。もし、地球以外に星の光を感じる目をもった生命が、地球以外になかったとすれば、初めて星(=太陽?)をみたのは、これよりずっと後のこととなります。太陽の光を感じてというか、今の植物と同じように、光合成(太陽の光をもとに二酸化炭素と水を分解して自分の体をつくるしくみ)を行って反映した生命が、はじめて星(=太陽)の光を感じていたとすれば、それは25億年前から20億年前の、ストロマトライトという藻(も)の一種だということになるでしょう。
さらに時間は進み、4億2000万年前に陸上に植物が現れ、それを追うようにして昆虫や、ひれをもつ魚たち、イモリのような両生類が地上に進出しはじめました。かれらは、きっと太陽を見ていたはずですし、遠くをみる視力のよい動物なら夜空の星を見ていたかもしれませんね。なお、人の祖先につながるネズミのような動物は数千万年前。サルのような人の祖先は、360万年前に生まれています。彼らなら、確実に星の瞬きを目にしていたはずです。
そして、最近、人類最古の星の絵が発見されました。1万年〜2万年前に描かれた、フランスのラスコー洞窟の壁画に、おうし座のプレアデス星団(すばる)と思われる絵がみつかったのです。星を最初にみた人はわかりませんが、星を見て最初に絵にしたのは、今のところ、フランスにすむクロマニオン人の中の誰か、ということになります。
なお、現在私たちが夜空に描く星座は、約5000年前にメソポタミア地方(今のイラク)でシュメール人やアッカド人、アムル人らが夜空の星を結び動物になぞらえたものとされています(詳細)
☆「めぐみ」「ちえこ」という星ありますか?
(恵さん・15歳)
人の名前のつく星というのは、彗星(すいせい)か小惑星です。彗星も小惑星も太陽の周りを回る小さな天体です。彗星には発見者の姓(みょう字)がつきますので、「めぐみ」や「ちえこ」という名前はつきません。「めぐみ」や「ちえこ」が星につけられるとすれば、小惑星ということになります。
小惑星は、2000年7月28日現在の確かなものだけで、16349個あり、そのうち10000個ほどには名前がつけられ世界的に正式に登録されています。小惑星の名前というと、昔は神様の名前だけでしたが、今はこれほどの数がありますので、今は発見者が名前を提案し、国際天文学連合がそれを認めて正式なものになることなります。観測所のある地名や、山の名前。家族や知り合い・友人の名前、最近は「カメンライダー」という漫画の主人公など、実にいろんな名前がつけられています。
さて、小惑星「めぐみ」小惑星「ちえこ」があるかどうか、調べてみました。実は、小惑星「めぐみ」は、1987年に群馬県の小島卓雄さんが発見した小惑星で、第3774番小惑星Megumiとして実在しています。小島さんの奥さんのお名前です。なお、小惑星Chiekoは、2000年7月28日現在、つけられていません。いつか、恵さん自身が小惑星を発見して、小惑星Chiekoと名前をつけてみてはいかがでしょうか。けっして、夢ではありませんよ。小惑星の名前の検索はこちら(英文)
☆どうして星や月ってあるの?
(光記くん・11歳)
宇宙ができてからしばらくたったころ、「水素(すいそ)」というガスが集まっていって、星や星の集まりである銀河系ができあがっていきました。
太陽や、夜空に輝く星のほとんどは、水素が集まって自分で光る星です。自分で光ることができない小さな星が、月や、地球、惑星とよばれる地球の兄弟星たちとなりました。だから、星や月は、宇宙にただよういろんな物質があつまってできたものということができます。
夜空の星や月って、見ているだけでもきれいですよね。きっと、私たち人間の心をきれいにしてくれるために、神様がつくってくださったのかもしれませんね。
☆宇宙には、何個くらいの星があるのですか?
(ある日の学習投映の時間の質問・小学6年)
太陽には、太陽と9つの惑星がありますね。でも、それ以外にもおびただしい数の小惑星と彗星があります。小惑星は、確かめられているものだけで2万5千個、発見されたもののまだ未確定のものも数万個あります。発見されていないものを考えると、10万個ともそれ以上ともいわれています。また、彗星も、記録に残されているものだけで1000個以上、発見されていないものも含めれば小惑星と同じくらいの数に昇るのではないでしょうか。
太陽系だけでこの数ですから、宇宙全体ではどれだけの「星」があるかわかりません。でも、太陽のように自分で光る星(恒星)だけを考えて、推定した研究があります。それによれば、私たちの太陽が属する星の大集団・銀河系には、約2000億個の恒星があるそうです。でも、その銀河系のような星の大集団・銀河は、宇宙全体で数千億個あるとのことです。ですから、仮に銀河の数を5千億個として星の数を計算するならば、
200000000000×500000000000=100000000000000000000000個となります。ところで、こんな大きな数字、どう読めばいいのでしょう。正確な読み方はあるのでしょうけれど、わたしは「ほしのかず」とよんでいます。☆雨の夜に星はありませんが、天体望遠鏡を使えば星はみえますか?
(健助くん・?歳)
残念ながら、雨や曇りの夜では、おおきな望遠鏡を使っても星は見えません。雨や雲にある水つぶが
、星の姿を消してしまうからです。
でも、晴れてさえすれば、明るい星であれば昼間でも望遠鏡で星が見えます。うそだと思う人は、事前にご連絡をいただければ、パレットおおさきの望遠鏡で昼間の星をお見せしますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
メールは、planet@palette.furukawa.miyagi.jp
お電話は0229‐91‐8611(担当:遊佐・松浦)まで。
☆カノープスは古川から見えますか?(星をみる会での質問より)
カノープスは、りゅうこつ座という南の星座の1等星ですね。りゅうこつ座という星座を初めてお聞きになる方も多いかと思いますが、この星座の英語名はカリーナです。どっかできいたことがあるでしょう。
さて、カノープスも、南の地平線ぎりぎりのところにあって、残念ながら宮城県での見える可能性はほとんどゼロです。理論的には、蔵王の山頂で見えるはずですが、まだ実際に見た方はいないようです。もっと南の地方に行けば、地平線から少しづつ高くなりますので、時期と時間帯によってはみえる可能性は高くなります。12月25日の夜11時半から0時過ぎごろ、東京では地平線すれすれの位置に見えます。もちろん、空の条件がよほどよくなければ見えません。
このように、カノープスは南の地平線低いところにあって、なかなかお目にかかれないことから、中国では「南の老人星」とよばれ、一目見れば長生きできると信じられていました。
さて、その地方から、どのくらいの南にある星が見えるかは、その土地の緯度によって決まります。北極星の高さは、その土地の緯度にほぼ等しくなります。
星の位置は、南北の方向に赤緯(せきい=地球儀でいう緯度に相当)という角度で計ります。赤緯90度を天の北極、赤緯マイナス90度を天の南極とよび、それぞれ北極と南極の天の真上(天頂)となります。赤緯が0度は天の赤道で、緯度0度つまり赤道上で、天頂を通る星の位置となります。すると、地平線の赤緯は、「90−その土地の緯度」という式で計算できます。古川は、北緯38.5度ですから、地平線の赤緯は、90−38.5=51.5度ですので、南緯51.5度より南の星は見えないことになります。カノープスは赤緯52.7度ですから、古川では地平線の下ということになります。