流星群とは
流星群は、たくさんの宇宙の「ダスト(チリ)」が地球に飛び込み、光を放つ現象。このダストの生みの親が、“ほうき星”の別名をもつ「彗(すい)星」です。
彗星の正体は、「汚れた雪だるま」のようなものと考えられています。つまり、氷の中にチリやさまざまなガスが詰め込まれたような状態です。それが太陽に近づくと、ガスが発生し、やがてガスやチリからなる尾ができます。こうして放たれたチリが、流れ星のもとなのです。
さて、数ある彗星のなかには、地球とその軌道(きどう=天体の通り道)が交わっているものがあります。地球が一年間かけて太陽のまわりを一回りするうちに、地球はいくつかの彗星の軌道を通過します。それで、毎年決まった時期に、たくさんのダストが地球の大気に突入し流星群となるわけです。
主な流星群として表の通り年間十数個ありますが、その中でも1月の「りゅう座流星群」、8月の「ペルセウス座流星群」、12月の「ふたご座流星群」は、ほぼ毎年決まって活発な出現が見られるため「3大流星群」と呼ばれています。
主な流星群
主な流星群 |
出現期間 |
極大日 |
数 |
母彗星(母天体) |
りゅう座 |
1月1日〜1月5日 |
1月4日 |
20 |
不明? |
こと座 |
4月16日〜4月25日 |
4月22日 |
8 |
1861I |
みずがめ座 |
4月25日〜5月10日 |
5月6日 |
6 |
ハレー彗星 |
ペルセウス座 |
7月20日〜8月20日 |
8月12日 |
50 |
スイフト・タットル彗星 |
おうし座 |
10月15日〜11月30日 |
11月上旬 |
3 |
エンケ彗星 |
ジャコビニ |
10月9日 |
10月9日 |
|
ジャコビニ彗星 |
オリオン座 |
10月10日〜10月30日 |
10月29日 |
12 |
ハレー彗星 |
しし座 |
11月15日〜11月22日 |
11月18日 |
30 |
テンペル・タットル彗星 |
ふたご座 |
12月7日〜12月18日 |
12月14日 |
50 |
小惑星3200(パエトン) |
こぐま座 |
12月18日〜12月24日 |
12月22 日 |
4 |
タットル彗星 |
*極大日および時刻は,年によって異なる。
*数は,極大時の1時間当たりの出現数。 |
ひとつの流星群に属する流星のもとは、その元となる彗星(母彗星)とほぼ同じ軌道を描いて太陽のまわりを回っています。したがって、同じ流星群であれば、ある彗星とみな同じ軌道でやってきますので、流星はみな地球に対して同じ方向から並行に飛んできます。特定の方向から突っ込んでくるため、ひとつひとつの流星は、ある星座の方向を中心に、空のある1点から四方八方に放射状に飛ぶように見えます。その空の1点を流星群の「放射点(ほうしゃてん)」とよび、放射点の属する星座の名前が流星群の名前となります。なおジャコビ流星群だけは、母彗星・ジャコビニ・ジンナー彗星に由来しています。
しし座流星群
しし座流星群の元となる母彗星は、約33年ごとに太陽に近づく「テンペル・タットル周期彗星 55P/Tempel-Tuttle」。
地球がこの彗星の軌道を横切る11月18日前後をピークに、しし座流星群は起こります。
この彗星が太陽に近づいた(回帰した)年からから数年間、しし座流星群は特に活発な出現を見せます。これまでの歴史の中で、しし座流星群は何度も大出現をくり返してきました。1時間あたり数千という流星雨(りゅうせいう)や、時に1時間数万という流星嵐(りゅうせいあらし)が観測されてきたのです。それは毎年見られるわけではなく、テンペル・タットル彗星の回帰にあわせて、約33年ごとです。
しし座流星群は3大流星群には数えられないものの、数ある流星群の中で史上最も華々しい活動を見せてきた流星群なのです。
出現が特に著しく,「流星雨」として記録された年は次の表の通り(丸善『理科年表』より)です。しし座流星群が特に多いこと、そしてほぼ33年ごとの周期性がおわかりかと思います。
|
流星群 |
出現が特に著しく,流星雨として記録された年 |
1 |
こと座 |
B.C.686,B.C.14,582,1093,1094,1095,1096,1122,1123,1136,1803,1922,1945,1982 |
2 |
うしかい座 |
1916,1998 |
3 |
ペルセウス座 |
36,714,830,833,835,841,924,925,926,933,989,1007,1029,1042,1243, 1451,1779,1784,1789,1862,1991,1992,1993,1994 |
4 |
ジャコビニ |
1926,1933,1946,1985 |
5 |
オリオン座ν |
585,930,1436,1439,1465,1623 |
6 |
しし座 |
585,902,931,934,967,1002,1035,1037,1202,1237,1238,13661466,1532,
1533,1538,1554,1566,1582,1602,1625,1666,16981799,1833,1866,1901,
1965,1966,1998,1999 |
7 |
アンドロメダ |
1741,1798,1830,1838,1847,1867,1872,1885,1892 |
8 |
こぐま座 |
1945,1981,1986,1994 |
この数年のしし座流星群
この数年、しし座流星群が注目を浴びています。
テンペル・タットル彗星は1998年2月に太陽に最接近(回帰)しました。そのため、彗星の軌道の近くのダストが豊富な空間を地球が通過する11月17−18日には、流星が大出現すると期待されました。多くの専門家の予想では、しし座流星群のピークは地球が彗星の軌道に最も近づく時。それは、日本時間の11月18日午前4時40分で、明け方の空でしし座が高く昇る日本が、最も観測条件の良い場所、とされたのです。
我が国で日本で流星雨が見られるとされ、しし座流星群ブームが巻き起こりました。しかし、ピークと予測された極大時刻の半日以上も前にヨーロッパ方面で突発的な大出現(右写真)があったものの、最も条件がよいとされた日本ではさほどの出現はありませんでした。続く1999年も、日本での流星雨は観測されませんでした。しかし、ヨーロッパ・アフリカ方面では、1時間に5千個という流星雨が観測され、19日の未明には日本で1時間200個程度の突発出現が観測されました。 |
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2000年はさほど流れないという予測が大勢を占め、実際に大出現はどこでも観測されませんでした。一見、ブームがさめてしまったかの印象でした。
しかし、今年・2001年は・・・・
「今年11月、しし座流星群が日本で大出現する」
「今年は11月19日未明に、流星雨が見られます。ピークは、日本時間午前3時20分ごろですが、真夜中から明け方まで見ているといいでしょう。」
こう予測しているのが、イギリス生まれで、現在北アイルランドのアーマー天文台及び岡山県美星町のスペースガードセンターで研究員の、若き天文学者デビット・アッシャー博士です。
アッシャー博士は、独自の理論によって、今世界的に脚光を浴びている天文学者です。多くの科学者が大出現を予測した1998年に、博士はそれほどの出現は期待できないとして、的中させました。さらに、99年には、ヨーロッパ・アフリカ方面で大出現すること、2000年は低調であることを予測し、これも的中させました。出現する時間帯も数分の誤差で、ほぼ正確に示していたといえます。
1998年当時は博士の理論に懐疑的だった天文学者たちも、1998〜2000年の動向を的中させてきたため、現在は彼の理論は広くを認められることになりました。
世界が注目する「アッシャー理論」とは
従来の理論では、流星群の元になる母すい星そのものの軌道と地球の軌道の接近距離と時刻を計算し、母すい星が最も太陽に近づいた年かその翌年が、最も流星群の活動が盛んになるとされていました。しかし、必ずしもその予報が当たるとは限らず、流星群の予報は非常に難しいものとされていたのです。
それに対し博士は、流星群の母すい星テンペル・タットルすい星が放出した物質でつくられる尾のうち、粒子でできる第3の尾「ダスト・トレイル」( trail=たなびいたような跡、しっぽ、などの意味)の軌道を正確に計算し、流星群の出現の予測に結びつけました。
彗星の表面から放出したダストたちは、ゆっくりと彗星本体から離れていきます。しし座流星群のもとになるダスト・トレイルは、約33年の周期で、同すい星が太陽に近づく(回帰する)たびに形成されます。
あまりにも小さいダストは、太陽の光の圧力の影響を強く受けて遠くに飛ばされてしまいます。大き過ぎるダストは、逆に彗星の重力で引き戻され、彗星からあまり離れません。したがって、推定0.01mm〜10cmくらいの大きさのダストが、彗星の軌道付近にある程度まとまって数百年間の間、ブーメラン状にとどまることができます。これが「ダスト・トレイル」であり、流星群を引き起こすのです。
長い年月の間に、ダスト・トレイルは、惑星の重力などの影響で、その軌道が微妙にずれていきます。また、次第に彗星の軌道上に散らばっていき、軌道上のどこでもダストがただよっている状態になります。しかし、あまり長い時間たっていなければ、彗星の割合近くにダストが群をなしているわけです。しし座流星群が、毎年ではなく約33年ごとに大出現をくり返すというこのムラの大きさは、逆に、彗星自体の「若さ」を物語っていると言えましょう。
そして、さらに33年で太陽のまわりを回るテンペル・タットル彗星とそのダスト・トレイルは、11年に一回転する木星とめぐり会いにくいという幸運な関係にあります。木星などの大惑星と近づくと、惑星の引力によってダスト・トレイルはバラバラになってしまい、流星雨は起こらなくなってしまいます。
アッシャー博士は、各惑星の引力のわずかな影響をも考慮した上で、数百年にわたるダスト・トレイルの位置を正確に計算し、そこを地球が横切るときに、たくさんの流星が観測されるという理論で予測しました。その結果、地球が、どんな経路で、いつ、どのダスト・トレイルと遭遇するかを計算によって割り出し、1998年・1999年、2000年のしし座流星群の出現時刻を分単位でピタリと当てたのです。
アッシャー博士のこの予測では、今年は「1699年と1866年の彗星回帰の時にできたダスト・トレイルの中を地球が通過する」としています。その時間帯にちょうど夜にあたり、観測に適した場所となるのが、日本を含めた東アジア一帯やオーストラリア。アッシャー博士は「出現数を予測するのは難しいが、天気が良く光害がない条件の良い場所では、1時間に一万個以上。1分間に百個程の流れ星のシャワーを浴びることができるかもしれない」といいます。
ピークの日時予測(日本時) |
月齢 |
1時間あたりの流星数(ZHR) |
ダストトレイル放出年 |
見られる場所 |
2001年11月18日 19:01 |
3 |
2500? |
1767 |
北・中央アメリカ |
2001年11月19日 02:31 |
3 |
9000 |
1699 |
日本、東アジア、オーストラリア |
2001年11月19日 03:19 |
3 |
15000 |
1866 |
日本、中央・東アジア、オーストラリア |
2002年11月19日 13:00 |
15 |
15000 |
1767 |
アフリカ、西ヨーロッパ、北アメリカ |
2002年11月19日 19:36 |
15 |
30000 |
1866 |
北アメリカ |
プラネタリウム『流星最前線』
パレットおおさきでは、9月1日から秋のプラネタリウム番組「流星最前線」が投映開始されます。詳細はこちらです
「流れ星とは何か」、「流星群とは何か」、「流星群を観察するにはどうしたらいいか」など流星についての基本をクイズ形式でやさしく理解でき、流星観察の練習など参加体験型の構成となっています。たくさんのCG(コンピュータ・グラフィクス)や迫力ある彗星のアストロビジョン実写映像も見物です。そしてアッシャー博士自身が登場し、博士の理論や今年のしし座流星群の状況などをわかりやすく解説してくれます。
投映期間は11月25日(日)まで。月曜日・木曜日・祝日の翌日が休館。投映時間帯は、第2第4土曜・日曜・祝日が、9:45〜・13:30〜・15:50〜の3回。平日は13:30〜・15:50〜の2回、各回50分間。番組の中に、その晩の星空をスタッフが生解説する「今晩の星空」が含まれます。
アッシャー博士がパレットおおさきで講演会
デビット・アッシャー博士が、11月2日パレットおおさきで行われる天文講演会のため来館します。パレットおおさき(大崎生涯学習センター)を運営する大崎地域広域行政事務組合の設立30周年記念に行われるもので、大崎生涯学習センター・東亜天文学会・日本スペースガード協会が主催します。流星の正体や流星群のしくみ、流星とその元となる彗星との関係、これまでのしし座流星群の歴史など流星の基本的事項とともに、アッシャー氏独自の理論の概要や今年のしし座流星の状況をわかりやすく講演します。
「天文講演会 『迫り来る流星雨』」
1.内容:
流星の正体や流星群のしくみ、流星とその元となる彗星との関係、これまでのしし座流星群の歴史など流星の基本的事項とともに、アッシャー氏独自の理論の概要や今年のしし座流星の状況をわかりやすく講演します。同時通訳、質疑応答あり。小学校高学年〜一般向き。おおむね小学校5・6年生から理解できるかと思います。
2.日時:平成13年11月2日(金) 19:00〜21:00 ・ 受付18:00〜、開場18:30〜
3.講師:デビット・アッシャー博士
(北アイルランド
アーマー天文台・日本スペースガード協会員)
4.場所: 大崎生涯学習センター(パレットおおさき)多目的ホール
〒989-6135 宮城県古川市亀ノ子111−1
(東北新幹線古川駅から車で10分) 交通アクセス・宿泊について
5.参加申し込み
・往復はがきに、参加希望者全員の氏名・年齢・住所・電話番号、返信用の宛名を明記してパレットおおさき「天文講演会」係まで申し込み下さい。
・申し込み期間:10月5日〜、先着順。定員(400名)になり次第締切。
6.問い合わせ
大崎生涯学習センター(パレットおおさき)
TEL:0229-91-8611 FAX:0229-91-8264
担当:遊佐・松浦 <planet@palette.furukawa.miyagi.jp >
主催 大崎生涯学習センター・東亜天文学会・日本スペースガード協会
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